緑花満つる日常 1(とらいがん/学パロ)

 ナイヴズはこの後のことを思ってうんざりとした。
 確実にレムははしゃぐだろう。「あのナイヴズが友人を連れてきたなんて!」と言って両手を組み合わせて喜ぶ姿が目に浮かぶ。その光景は反抗期真っ只中のナイヴズにとっては恥ずかしくて悔しくて仕方ないものだった。
 次に、ヴァッシュが言い出すのだ。

「ただいまレム! 彼が俺たちの友達、ウルフウッドだよ!」
 ほらこいつはやっぱり言った。
 予想していた展開にうんざりする。さらに、十六才とは思えぬ如才のなさでレムに人好きのする笑顔で笑いかけるウルフウッドを見ると。
「初めまして、美人なおかーさん。ヴァッシュたちの先輩のニコラス・D・ウルフウッドです」
「あらー! ヴァッシュとナイヴズのお友達なの? 私はレム。二人の母親よ」
 そう言ってレムは強くウルフウッドの手をつかむと、上下に激しくぶんぶんと振り回す。痛そうだ。若干痛いのか、顔が引きつっている。
「レム、俺たちは部屋で遊んでいるから」
「ええ。オレンジジュースにポテトフライ、チョコスティックまでつけてあげる!」
 ヴァッシュとレムはそうして両手を打ち鳴らす。
 全くテンションの高い親子だと呆れながらウルフウッドを見やり、目をわずかに見開いてしまった。
 ヴァッシュとレムを見つめるウルフウッドの瞳が、黒い瞳が深遠な慈しみを湛えていたのだから。夢を見ているような、手からこぼれ落ちた過去をなぞるような。そんな瞳で。
 ナイヴズの視線に気付くとウルフウッドは首をかしげる。
「どないした?」
「なんでもない」
 そう、なんでもないのだ。
 ウルフウッドに関することとして、自分は手駒として彼が欲しいだけであり、また弟の執着を一身に受けているのが面白くないから横槍を入れているだけだ。
 それだけだ。
「ほら、部屋に行こう!」
「わ、引っ張るなトンガリ!」
 ヴァッシュがウルフウッドの手を引いて自分の部屋に連れていこうとする。ナイヴズは止めるかどうか一瞬だけ素早く思考した後についていくことにした。



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    創ることが好きな人。
    こぎみかとリクサラを主に、世界を大切にしつつ愛し合うカップリングを推しています。

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