夢の世界も甘すぎると昇華することに苦労する
アーサー王の呪いから少しずつ離脱していき、自身の理想の王について考え始めたモードレッドさんのお話です。
登場人物はモードレッドさん、ジキルさん、マシュにフォウ君に藤丸立香、そしてマーリンです。最後のマーリンが本当に人でなしなのですが、呆れながらも憎めないところがずるく、もう呼び捨てでもいいかなという境地に立ってしまいます。
今回のハイライトは三つで、一つは「母親が優しいわけないだろ」というモードレッドさん。人工生命として「Fateシリーズ」では誕生し、その生み出した存在がモルガンさんなのですから仕方ないのですけれども、躊躇無く前述の台詞を言い切るあたりに、モードレッドさんは「まだまともに情緒が育っている」と思わずにはいられません。
二つ目は、ジキルさんです。第四章のロンドン繋がりだとは思いますが、シミュレータでぼっこぼこにされたり、モードレッドさんのことを気遣っているわりには扱いが哀れですが、優しいなあと癒やされます。「マスターのことは頼りにしている」という発言もありがたいです。モードレッドさんに頼りにされているのは純粋に嬉しいことですので。
そして、モードレッドさんの夢の世界に巻き込まれます。第二話は純粋な戦闘回ですが、第一部の頃に実装された幕間としては敵が強い気がしました。当時だったらきつかったでしょうね、この幕間。どれだけ溜めているんだ、という話ですが、キャラクターの掘り下げは好きなのでつい後回しにしていたのです。
そしてカムランの丘でランサーのアルトリア・ペンドラゴンと相対するモードレッドさん、そしてマーリンと遭遇して語られる夢の切なさが最後の見所です。
夢が、現実の理想であったら辛いです。「こうなっていたらよいのに」が再現されるほど哀しくなります。モードレッドさんは慰めを必要としない強い方なので、この思いは伝えられません。ですが、私は「Fateシリーズ」のモードレッドさんが王となる国もそれほど悪くはないのではないか、ということは伝えられたらなあと涙腺が緩みました。
アルトリアさんとモードレッドさんでしたら、断然、モードレッドさんなのもあるのでしょうけれども。何度も語っていますが、やっぱり私にアルトリアさんは辛すぎます。
最後に「人工生命の夢は美味しくない」と言うマーリンに「ひとでなし!」と突っ込ませてください。昔は好きでしたし、いまも絆十五まで到達している関係ですけれども、以前ほど純粋にマーリンのことを好きだと思えないのですよね。マーリンがひとでなしの意味がようやくわかってきたからかもしれません。
こちらの幕間はモードレッドさんよりも彼を取り巻く周囲の方が印象として強く残ってしまうところが、やや点を辛くしそうですね。
それでも、決して主役に立つことはないモードレッドさんが私は好きです。
