落陽を迎えることは人の定めであれどせめて自身の目で見届けたい
ゼノビアさんという、結末が定かではないという史実の人物故の苦しみを正面から捉えている「幕間の物語」でした。個人的には聖ヨハンナさんも連想してしまいます。二人とも、後の解釈と虚構に揺れていました。
定まらない自分の結末に苦しむゼノビアさんは、マスターである藤丸立香に自身を鍛えてもらいたいと申し出ます。当然のことながら進んで協力する藤丸立香。彼(彼女)も面倒見がよい、というよりもサーヴァントの変化や成長を楽しんでいますね。
藤丸立香が選んだ師匠たちですが、メイヴちゃんからは女王として貫き通したい我儘を、ラクシュミーさんと秦良玉さんとは戦術ゲームを通じて戦いを学びました。そして戦術ゲームの相手であるローマの方々、ロムルスさん、カエサルさん、ネロさまからも新たな視点を学びます。かつて自身が刃向かった相手の祖と話すことにゼノビアさんは肯定的で、支配する側も支配する責任があるため、容易に腐敗してはならない厳しさを見つめます。
様々な訓練の最後に、ゼノビアさんは汚辱としている自身の過去と向き合って、在り方を見定めようとします。
ゼノビアさんの過去は説いた歴史家の数だけ分岐していて、何が正解かはわかりません。
だけれども、実際に歴史上起きたことは一つだけなのです。現代に生きる藤丸立香も、サーヴァントのゼノビアも、起きたことを確かめることはできませんが、結果は変わりません。残酷なことです。
歴史で起こりえたことは一つ。だというのに、解釈は後の者が無数に膨らます。虚実入り交じる説を唱え、時に賛美し時に愚弄する。
歴史上の人物だからとはいえ、評価し辱める権利は誰にもないというのに。ですから、史実の人物に対する評価と好悪、そして為した実と虚は分断していなくてはならない。
当たり前のことを学びました。
最後にゼノビアさんについて。
結構好きなサーヴァントです。不運で、不遇なところに惹かれてしまったのかもしれません。そういうところが私にはあります。
ですが、一番は今回の「幕間の物語」のようにそれでも抗おうとするところが好きです。生真面目な性格も好印象。
変えられない定めを乗り越えようとする我儘を貫いていく、これからのゼノビアさんに期待です。
